日本話し方センター社長・横田章剛のブログ

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2021年8月26日質の高い経験を積んで共感する力を磨こう!

このブログでは、何度か話にはその人の心や考えがそのまま表れる、ということを書いています。せっかく話をするのなら、その話で相手に良い影響を与えたいですよね。それが習慣になれば人間関係がよくなり人生を明るく過ごすことができます。そのために、常にポジティブで積極的な気持ちを持ち、それが言葉に表れるようにしましょう。



このことについて一つの例話を紹介します。パナソニックの創業者松下幸之助が若くして会社を立ち上げた当時、電球を作る事業をしていました。一連の作成作業の仕上げの段階で、電球を布で磨く、という仕事がありました。ある日、幸之助がある工員の仕事の様子を見ていると、いかにもつまらなさそうに電球を磨いています。単に電球を磨く、というだけの作業ですので、そうした人がいたのも容易に想像できます。

しかし、それを見た幸之助は、こう言いました。
「君、ええ仕事しとるな~。子供らは夜になると暗くなるから勉強したくてもできん。せやけど、君が磨いた電球があれば夜も勉強ができる。本が読める。そうやって勉強した子供らがやがて社会に出て活躍して日本の未来を作ってくれるんや。君は日本の未来を作る仕事をしてるんやで。ほんま、ええ仕事してるな~。」
その工員は、それ以来自分の仕事に自信と誇りを持ち、やりがいを感じるようになったそうです。

日本話し方センターのベーシックコース2日間集中セミナーオンライン短期集中コースではこのような例話を示しながら、人に良い影響を与えられる心を持ちましょう、という講義を行っています。実際、私はこの講義はとても大切だと思っています。しかし、この講義を聞いた受講生の反応は年代によって異なる傾向があります。40代以降の方には比較的共感していただけますが、それより若い年代の人にはなかなか理解してもらえないように感じています。私自身も30歳の半ばまでは、生き方や心の持ち方に関する話を好んで聞いたり読んだりはしなかったように思いますので、若い人のこうした反応は当然のことと思っています。

年齢を重ねるに従ってこうした話に共感するようになる理由の一つに、人生における経験の量があると思います。今年61歳の私は、生き方や心の持ち方に関する話を聞くと、「あの頃経験したことと共通した話だな。わかるなぁ」「この話、その通りだと思う。だから、あの時にあんな失敗したんだよな」などと、自分の経験に照らし合わせて思い当たることが結構あります。自身の経験と照らし合わせて共感できるからこそ、こうした話も素直に受け取れるのです。そう考えると、人生における経験は自身の感性を磨く上でとても貴重なものだということができます。

最近は、新しい知識やテクノロジーが次々に出てきて過去の経験がなかなか活かせない場面が多いです。そのため、ベテランの経験が役に立たない、むしろ新しいものを取り入れる弊害になっている、という話をよく聞きます。しかし、その経験を通して感性を磨いていけば様々なことを柔軟に受け止め、理解できる素地が自身にできていくのではないでしょうか。人生における経験というのは、やはりとても貴重なものなのです。

ではどのような経験の積み方をすればよいのでしょうか。他の人がやったことがないような大冒険をせねばならないのでしょうか。また、他の人が驚くようなチャレンジをせねばならないのでしょうか。私はそうは思いません。日常の中でも学べる経験は数多くあります。大事なことは一つの経験をどれだけ質の高いものにできるか、ということです。

ある経験を、面白かった、悲しかった、ドキドキした、だけで終わらせてしまうのはとてももったいないことです。
・なぜそれが起こったのか
・自分はその時どう考えたのか、そこに自分のどういう人格が表れているのか
・どうすれば避けられたのか、もっと良いものにできたのか
など、色々と考えることでその経験から得られるものは格段に違ってきます。つまり質の高い経験ができるということです。

これを習慣化すれば自身に蓄積される経験の量が増えていき、様々なものに共感できることも増えていくでしょう。物事を素直に受け止めることができれば、人生における知恵も豊かになっていく。そうすれば、より納得できる人生を送ることができるのではないでしょうか。
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